小説の表紙(ダストカバー)デザインについて

ここで言うところの表紙とは、ハードカバーのシンプルな文字だけの表紙ではなく、主に文庫本の本体の上にかけているダストカバーのことで、書店で表に出ている表紙のことです。 人物̶̶特に主人公の顔のイラストが描かれている表紙は無粋です。小説は読者がその物語に没入し、作者との世界を共有またはそれ以上の読者自身の世界を創りあげることが楽しみなのです。 ところが読む前からイラストレーターの個性を出した主人公の顔を見せられては、読者の想像力を邪魔するものでしかありません。 小説を読む読者は、能動的に自ら世界に自らを置いてみるものです。 逆に映画やドラマはキャスティングを決めた監督なりが主人公像を観客に提供する。視聴者は受動的なのです。原作を読んだ視聴者はその配役が自身の創り上げた世界とマッチしておれば納得し、ミスマッチであればその映画またはドラマに失望します。 主人公の顔の表現することが必ずしも悪いことではない場合もあります。例えば、シャーロック・ホームズのように物語の中で容貌の表現が克明に描かれている場合は、どんなイラストレーターが描いたものでも読者の思い描く人物像との乖離はほとんどないでしょう。 では、良い表紙とはどんなものか。ハヤカワミステリーのクリスティ文庫では、風景や事物の写真を使っています。味気ない、物足りないと思う向きもあろうが、読者が物語世界に入り込むためのヒントにとどまっている適切な選定といえましょう。 筆者が優秀と言える表紙としては、創元推理文庫のアンソニー・ホロビッツのシリーズです。基本的には道具のイラストで、実物写真ではなくオリジナルでありながら想像力を掻き立てる助けになっています。
    自治会広報部顧問 元大阪芸術大学教授 高田さん寄稿
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